ながいけん『第三世界の長井』01・02巻

再読。初読時と変わらず、長井が哀れすぎて読んでいられない。アンカーでベタベタと設定を貼り付けられる長井には同一性もなにもないし自由意志もない。今のところ外見は一応初期設定で維持されてるようだけど落書きみたいなその姿は今後どんどん怪物みたいになっていくかもしれない。感情はある。アンカーは感情への干渉も可能であるけれど、それは予測しうる感情のコントロール(父の設定とか)とすでに発露された感情への事後解釈であり、読んでいるその瞬間に不自然な発話とぎこちない動作の奥に見出されるナマの感情はある。しかしそういうところをテコに最終的に長井がキャラクターとして解放されるのだとしてもこの存在を見守るのはつらすぎる。

大したことじゃないけれど、ベタ読みしにくいメタが苦手だというのもある。元長柾木も言ってたけどハルヒとか普通に考えてベタ読みする小説だと思うし『かってに改蔵』だって作中にまるごと現実世界と同じ作品があって芸能人がいるんだと思えば多くの回はベタ読みできる。だけれど、アンカーを作る「編集者」とか「モリタイシ」とかをベタ読みするのは感覚的に難しいし顔写真演出なんかもかなり厳しい。そういう、現実の悪意でキャラクターがひどい目にあうみたいなのは苦手だ。